野球学講座 第二回 「フォア・ザ・チーム」

「一人はみんなのために、みんなは一人のために」という言葉が何となく好きです。
スポーツは大きく分けて「個人競技種目」と「団体競技種目」に分かれます。
柔道や剣道、ゴルフやマラソンは個人競技です。
サッカー、バスケットボール、バレーボールなどは団体競技です。
もちろん野球もそうです。
団体スポーツにおいては、自分さえよければよいという「利己主義的なプレー」は許されません。
すべてはチームの勝利のために自分に何ができるか?ということが大切になります。
自分の一番得意とする点でチームに貢献すること自分が犠牲になってチームに貢献すること、が評価されます。

 聞くところによると、野球は戦争から生まれたゲームらしい。ワンアウトのことを一死といいます。
ホームインすることを生還といいます。ダブルプレーのことを二重殺といいますし、ランナーがはさまれてタッチアウトになることを挟殺といいます。犠牲バント、犠牲フライが高く評価されます。
自分の成績は悪くなってもチームが勝利すればすべて報われる。
みんなから誉められる。犠牲になった自分に誇りが持てる。
自分の生き甲斐になります。「ああ、犠牲フライが打てて良かった」と心から嬉しくなります。
これは子供達の教育にもとても良いことだと思います。

今の世の中はどうでしょう。
社会の人々は、自分本位、自分さえよければよいという風潮が顕著です。学歴社会の中で、他人を蹴落としても自分が出世すればそれでよいと思っている人が多すぎます。
学校でのイジメなども、このような考え方が背景にあるのではないでしょうか。自分さえいじめられなければ、他人がいじめられていても見て見ぬ振りをする。その結果、イジメが横行する。
先生も無責任に対応する。その結果、被害者は自殺に追い込まれる。
自分の利益を最優先する風潮。社会全体のことは考えない。
公共の利益、国民全体の利益よりも自分の利益。
私利私欲が一番大切という世の中になってしまいました。
政治家も、警察官も、社長さんも、みんな自分本位になりました。
これでは、世の中は良くなりません。人の見てないところで、道を掃除したり、ゴミをかたづけたり、老人を助けたり、自分が損をしても社会全体のために汗を流すことが大切だということを子供達に教えたいものです。

先に述べましたが、野球では、これが評価されます。
みんなの力で自分を超えるチームのために!
という気持ちを大切にします。いいですね。
本当にいいですね。野球は・・・・・・・・。
私が野球を愛する理由の一つがここにあります。

時々、人生もそうなのかな・・・・・・・・・・と思います。
自分のためだけに生きることで幸せを感ずるのかなと考えてしまいます。誰かのために、誰かの役に立っているという気持ちが自分を幸せな気持ちにさせるような気がします。
誰かに喜んでもらったとき、誰かの役に立ったとき、誰かが感謝してくれたとき、自分のやったことで誰かが幸せになったとき・・・・・・etc
そんなとき、「ああ・・・自分は幸せだなぁ」と思ったりします。
まさに、「一人はみんなのために、みんなは一人のために」
フォア・ザ・チーム・・・チームのために頑張ろう!という選手の汗が一つになって目的を達成する。
何と素晴らしいことでしょう。
個人個人が自分のエゴイズムを超えて、全体のために貢献する。
そして、その結果、本当の意味の充実した「幸せ」を手に入れる。
フォア・ザ・チームの精神は崇高な精神だと思います。

読んでいただきありがとうございました。

                                             
2000年11月1日
背番号4
高乗正臣



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