陵南公園
ビッグウェーブ 0 0 1 0 0 0 0 1
キングス 1 0 1 0 1 0 × 3
(三)砂川 (二)砂川 (一)高乗智2 上村
(投)トクナオ
「会長観戦記 2001.8.19」











 野球の醍醐味

 実に身体中が震えるほどの緊張感溢れる好ゲームだった。
 時は平成13年8月19日(日)午後3時、場所は八王子陵南公園球場、対戦相手は日野リーグ2部のビッグ・ウェーブ。
 この日、キングスは午前中に北野球場で多摩ガッツとの後味の悪い負け試合を終えての2試合目であった。その前の試合(8月5日の日野スポーツ大会での横河戦)は、最終回にまさかの逆転サヨナラホームランを喫した屈辱の試合だったから、野手のミスで好投の高橋投手の足を引っ張った午前の多摩ガッツ戦は少しこたえていた。気持を切りかえて午後の試合に臨もうと全員が思っていた。それには、トクナオ投手がもう一度マウンドに立って、今度こそキングスの野球をする以外にはないと思われた。
 試合前、陵南公園近くのそば屋で食事をとりながら皆で話し合った。ともかく、トクナオの仇をとるのだ。そのためには目一杯の試合をしよう。場所は「そば屋」である。何か討ち入りの前のような気分が感じられた。
 定刻、グランドに入る。相手チームは若手中心。少しだらけた雰囲気のチームであったが何人か経験者がいると見えた。午前中の相手とは訳がちがう。ビッグ・ウェーブの先攻、マウンド上には相手チームこそ違うが自らリベンジを期すトクナオ投手の姿がある。ナインに緊張感が走った。午前中顔を出していた中川主将がこの試合欠場したため、やむなく内野の布陣が変更され、サードに高乗正、ショートに雄高、セカンドに高橋、ファーストに涌井という形になった。
 1回表、先頭打者を3塁ゴロにうち取った後、2番バッターにレフト前に打たれ、盗塁を決められる。3番はサードゴロで2死2塁、ここで4番バッターがトクナオ投手の少し甘く入ったストレートを痛烈にレフト前に運んだ。ランナーは3塁ベースをまわってホームへ全力疾走。ここで、レフト砂川は前進してきて矢のようなバックホーム・・・、素晴らしい強肩を見せた。ランナーはホーム寸前タッチアウト!! これでチームが勢いづいた。その裏、1番雄高がショート内野安打で出塁するが盗塁失敗、しかし2死後、3番打者トクナオ、4番砂川がていねいに四球を選んで1.2塁、ここで5番智がセンター前ヒットを放って1点を先取した。
 2回裏にアクシデントが起こった。四球で出た高乗正を1塁において涌井がバント、この時、涌井の右手親指にボールが当たった。爪を痛めてしまった。涌井選手は試合途中で病院へ。
 3回表に四球とヒットを絡められて1点を取られ同点となったが、すぐその裏に、2死から砂川の右中間突破のツーベースヒットと智のショート強襲ヒット、和田の四球で満塁として高乗正が四球を選んで押し出しの1点。さらに、5回裏無死から、またしても砂川がセンターオーバーの3塁打を放った後、智がうまくライト前にランナーのクリーンヒット・・・・、砂川が生還したが、なんと智はライトの返球で1塁寸前でアウト、名誉あるライトゴロに終わった。その後、徳留投手が踏ん張って、試合は3対1で勝った。キングスのヒット数は5本、ノーエラー、相手もノーミス、ヒット数は8本だった。
 点数からいえば、上に書いたとおりの試合であるが、ゲームの流れは先に述べたように緊張感溢れるものだった。ランナーを背負って懸命に投げる徳留投手、それを全力プレーでバックアップする野手陣・・・・・、まさに「息詰まる熱戦」だった。2死満塁から痛烈なライナーがライトへ、藤田選手が懸命にこれを追って好捕する。右中間を破られるが、和田選手と藤田選手が懸命に回り込んでセカンドへ返球してシングルにする。何度も大きなフライがセンターへ飛ぶが、和田選手が楽々追いついて好捕。相手のクリーンアップがサードへ痛烈な当たりを放つものの、珍しく動きのよい高乗正選手がこれをさばいた。雄高選手、高橋選手、監督も懸命に守った。ともかく、全員で攻撃し、全員で守りきった。
 トクナオ投手は6回当たりから体力の限界に近くなっていたが、根性にものをいわせてねばり強く投げきった。ノースリー、ワンスリーになるものの、そこからのトクナオ投手の気合いの入った投球が見事であった。腕の疲れ、足の筋肉の疲労を気合いで乗り切ったトクナオ投手の姿に、最近忘れられている「男の姿」を見た。身体中から闘志をむき出しにしているトクナオ投手を見て、奮い立たないような選手は男じゃない。チーム全員の心が、一つになったゲームであった。
 8月5日とは正に対照的、ゲームが終わった直後、ベンチで選手全員がこの試合の余韻に浸っていた。これで8月5日の試合を乗り越えられた。
 ともかく感動的な試合だった。「野球の醍醐味」を味わった試合だった。誰かが言った。「広瀬コーチや石井さん、涌井さん、それに中川主将にもこのゲームを見せたかった・・・」と。キングスで野球をやっていて本当に良かったと思う好ゲームであった。


2001年8月26日
背番号4
高乗正臣


                                      
                                         
コラム目次へ戻る