「国立キングス2006後半戦に向けて」

 今シーズンは、これまであまり芳しい戦績ではありませんが、これはたまたまこうなっているわけではないと思います。野球をするうえでとても大切な「心」、気持ちの持ち方、感情の揺れが大きな原因ではないでしょうか。具体的に言うと「試合中の気持ち」のコントロールができない、「練習に取り組む際の意識」がまだまだ充分ではないためと考えています。これは、キングスがいい加減な気持ちで活動している、と言っている訳ではありません。キングスは、向上心の強いとても良いチームです。僕はこのチームがとても好きです。

 ですが、ここでそれを詳しく述べてもチーム力アップには何の意味も持たないので、あえて悪い部分、不足している部分をあげて、それらを改善するためにはどうしたら良いのかを考えてみたいと思います。

 まず、先にあげた「試合中の気持ち」のコントロールについてですが、これは度々話題にのぼる「試合の流れ」「ムード」といったものと深く関係していると考えます。流れやムードは目に見えない力ですが、明らかに存在し、勝敗を大きく左右しています。ですが、これは決して野球の神様や第三者がつくっているものではなく、選手(チーム)の気持ち、思い、感情が作り出しているものです。ということは、訓練をすれば自分達で意図的に作り出せるものです。

 では、どうすればいいのか?簡単です。
 何が起こっても、マイナスの気持ちを引きずならないことです。とはいえ、タイムリーエラーやチャンスで三振。。。なんていう時は、そうそう自分の気持ちや感情をコントロールできません。真剣に全力プレーをしていれば、なおさらです。「あっ〜、やっちゃった...」「みんなに迷惑かけた...」「俺のせいで負けだ...」自分の不甲斐なさを呪い、悔しい気持ちが湧いてくるのは当然です。
 でも、そこで終わってはいけません。すぐに意識的に「次は必ず捕る」「次は必ず打つ」「必ずミスを取り返す」と、感情をプラス方向に無理矢理持っていくことが大切です。ただ、これも当初はなかなか難しいかもしれません。そんな時は「次は捕る」「次は打つ」と心の中で3回唱えたり、口にだして言う事です。唱えたり、実際に言葉にすることで、だんだんと本当にそう思えるようになります。誰かがミスした場合、周りの選手もがっかりしたり、不安になったりせず「俺が取り返してやる」と意識的に考えることが大切と思います。基本的には、マイナスの気持ちを持っている選手が多いほど、チームのムードは悪くなり、プラスの気持ちをより多く持っているチームに「試合の流れ」は傾きます。
 「試合の流れ」が1本のヒット、1個のエラーやフォアボールなどをきっかけに変わることを多々経験してきましたが、あるプレーをきっかけに、みんなが「行けるぞ!」と思ったり、不安になったりする。それが「試合の流れ」が変わるタイミングではないでしょうか。

 それゆえ、一人一人がマイナスの気持ちをひきずらずに、常にチームとしてプラス方向の気持ちを持っていることが重要と考えます。
 更に、いくつか例をあげますが、キングスが「4対2でリード」しているゲームの5回裏の相手の攻撃。先頭打者に二塁打を打たれてしまった。この時に「やばいかもしれない。。。」なんて思うのは×です。今年のキングスはそんな雰囲気を醸し出し、勝手にムードを悪くしているように個人的に感じているので、当たり前のことですがあえて触れておきたいと思います。この場合、逆の立場にたって考えることが、時には有効かもしれません。キングスが2点リードされている状況で、ノーアウト2塁この場合「よし、いけるかも」と思いつつも、タイムリーがでても「まだ1点負けてる」と1点の重さを感じるはずです。
 リードしている2点は少なく、リードされている2点は多く感じるのです。更に、もし自分が次のバッターだったら。。。プレッシャーを感じるかもしれません。
 簡単に言うと、多くの場合相手も同じであるということです。このことを、忘れずに不要な不安を抱かず、次のワンアウトをとることに集中しましょう。

 それから、今シーズン何度か経験していますが、リードしているのにムードが悪い方向に流れるケース。
 これは、ひとつには「このまま逃げ切れるだろう」とか相手をなめての気の緩みがもたらすものではないかと思います。「勝負は下駄をはくまでわからない」のです、どんな相手、どんな試合展開、どんな場面であっても、常に集中して自分達のベストプレーをすることを考えましょう。

 その他、思いつくケースは多々ありますが、このまま書き続けると当分終わりそうもないので、話を進めます。
 次に「練習に取り組む際の意識」がまだまだ充分ではない、についてです。異論もあろうかと思いますが、僕が見ている限りにおいて守備のミスの多くは、とても基本的な原因によるものが大多数と思います。捕球の際にボールから一瞬早く目が切れる、送球が不安定であるは、キャッチボールの重要性に対する意識の不足からくるものと思います。練習時の首脳陣からの言葉「場面を想定してキャッチボールをしよう」を、選手全員が今一度強く意識する必要があると思います。狙ったところに投げる、ボールの正面に入り、最後までボールを見て両手で捕球、捕ったら素早く送球動作に移るなど、練習でやっていないことは、試合の咄嗟の場面でできるわけがありませんよね。

 また、トスやハーフの際の守備も、生きた打球で練習できる貴重な機会です。バウンドをあわせるタイミング、打球の落下地点の見極め、捕球動作の確認など、意識しているのとしていないのとでは、同じ時間を過ごすのでも、内容に大きな差がでてきます。

 キングスのヒットやヒット性の当たりの多くは、甘いボールを打った場合が多く、これは好球必打という観点からすれば◎ですが、言い換えれば難しいコースはほとんどが凡打になっている、とも言えます。レベルの高いピッチャーは、そうそう甘いボールは投げてくれません。球は遅いけど、内外角に投げ分け打たせて取るタイプのピッチャーの術中にはまる、変化球をひっかけるなんていうのもキングスの弱点のひとつです。

 当たり前のことですが、内角と外角ではヒッティングポイントが異なります。これは、タイミングの取り方、フォーム(体の使い方)にも違いが必要であるとういことです。更に同じ外角でもストレートとカーブでは、カーブの方がヒッティングポイントに達すのが遅いですね。このような、球種によるタイミングの違いもあります。
 ただ、内角ストレート(一番早いタイミング)と外角変化球(一番遅いタイミング)の間には、おそらく0.5秒程度の違いしかありません。この微妙な差を埋めるのが廣瀬コーチが口をすっぱくして言っていた「タメ」ではないでしょうか。

 最近、ティーバッティングでは、主にフォームの確認、修正という意識を持って取り組んでいましたが、これは継続しつつも、今後は内外角コースごとのポイントの違い、体の使い方、タメの習得といったものも、強く意識していくことが大切であると考えています。まず頭で理解し、練習をして、体に染み込ませる。できることが増えれば、より自信を持って打席に立つことができるようになるはずです。ボールを最後まで見れば捕れる、どのコースにどんな球種がきてもついていける、そういう気持ちを持てるようになれば、おのずとどんな場面、状況においても心の揺れも小さくなっていくのではないでしょうか。
 これから後半戦に向けて、それぞれの練習の目的をより強く強く強く意識して、地道にコツコツやっていくことのみが、キングス浮上の鍵であると考えます。
 最後に、強くなるための近道がなくて残念です。。。が、秋の国立市民大会優勝を当面の目標にして、試合や全体練習だけでなく、平日も時間の許す限り体力と技術のレベルアップを目指し練習に取り組み、より一層精進していきましょう。


2006年6月
背番号16
上村雄高

                                              

                                     
                                         
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